収益還元法による不動産投資の基本を理解しよう
最近、不動産の地価(土地の価格)を査定するのに使われるのが「収益還元法」という考え方です。これまでややブラックボックス的だった、不動産(土地)の価格という面を収益性(キャッシュフロー)という観点から再考しています。不動産投資をするのであればぜひ押さえておきたい、また理解しておきたい考え方です。
ここでは、不動産投資と収益還元法について分かりやすく解説していきます。
不動産投資と価格
不動産に投資するにしろ、自分のマイホームを建てるにせよ、できるだけ適切な、むしろ得する値段で購入したいものです。そこで、日本で利用されている土地の価値基準である。「実勢価格」「公示価格」「路線価」などとは違う、収益還元法(しゅうえきかんげんほう)による不動産価値算定の方法について検証し、その計算方法を紹介していきます。
収益還元法を利用する事で、投資という観点から見た不動産の実態価格を算出することができるようになります。計算方法はともかくとして、収益還元法という考え方を不動産購入時に考える事は非常に重要ですので、是非収益還元法を覚えておいてください。
収益還元法とは
収益還元法とは、その不動産(土地)から生み出される利益からその不動産の適正投資価格を算出する。という方法です。この収益還元法については、既にグローバルスタンダードな計算方法なのですが、日本においてはほとんど普及していないのが現状です。
その理由は、日本においては他所の土地をいくらで販売したのか。ということについて公開されない事が暗黙のうちに原則化されており、不動産会社などが周辺の土地の価格等を勘案した「比準価格」というものを利用して、それを基準にして不動産会社が土地の価格を決めているからです。このことを「取引事例比較法」と呼びます。
さて、上の説明に疑問はないでしょうか?
そうです。上の説明において、土地の価格を決めているのはあくまでも不動産会社であり、消費者はその価格の構成要因となっていないのです。つまり、不動産会社が圧倒的に有利な状況にあるわけです。これでは、私達通常の消費者は土地やその他不動産を購入する際は常にぼったくりにあってしまう事につながります。このような問題点を改善する為に「収益還元法」の利用をお勧めします。
そもそも、何故土地に価値があるのか。というと、それはキャッシュを生み出すからです。例えば家を建ててそれを人に貸せば家賃収入が、農作物を育てればその農作物の販売益が。というようにその土地を利用する事で収益を得る事ができるからです。
マイホームの場合も、本来あなたが住んでいる家を人から借りた場合は家賃を支払う必要がありますが、それをしなくてよい。という事で、家賃分の収益を生んでいるとみなすことができます。
この土地から生み出される収益を基に、その土地価格(不動産価格)を計算する方法が収益還元法です
収益還元法による不動産価値算定の予備知識
収益還元法の計算方法を説明する前に予備知識として、現在価値と将来価値について検証します。この違いについて説明できる人は、この部分は飛ばして呼んでも結構です。
ここで突然!投資家適正チェックを行います。有価証券Aの適正価格はどのくらいか考えてみてください。
有価証券A:5年間にわたって確実に毎年10万円ずつ配当される。配当されないリスクはゼロとする。ここで、この有価証券Aの適正価格を50万円と答えたあなたは残念ながら投資家失格です。
お金には現在価値と将来価値というものがあります。そして現在価値は今ここにある現金の事で、将来価値は将来的に、例えば10年後に手に入る100万円のことです。
そして、現在価値の100万円と将来価値の100万円では現在価値のほうが価値が高いとみなすことができます。
ここまではいいですか?わからない方は、今日1万円貰うのと、10年後に1万円貰うのでどっちが嬉しいか考えてみてください。直感的に今日1万円貰ったほうがお得感がありますよね?
では、この有価証券Aの適正価格について考えてみましょう。
計算を簡便化するため、今無リスク資産(一般的には円通貨で考える場合には10年国債などの金利が使われることが多いです)について投資をした場合、年間3%の運用益が得られると仮定しておきます。
では、毎年10万円ずつを運用すると、
1年後の価値=10×(1+0.03)=元本×(1+利回り)となりますよね?
つあり、将来価値=現在価値×(1+利回り)となります。
ここから両辺を(1+利回り)で割ってやると、現在価値が出てきます。
現在価値=将来価値÷(1+利回り)
これから計算すると、
有価証券Aの現在価値は、
1年後 10万円÷(1.03)
2年後 10万円÷(1.03×1.03)
3年後 10万円÷(1.03×1.03×1.03)
4年後 10万円÷(1.03×1.03×1.03×1.03)
5年後 10万円÷(1.03×1.03×1.03×1.03×1.03)
を純粋に合計したもの、つまり、有価証券Aの現在価値≒45万7900円
という事になります。これが、現在価値と将来価値の計算方法です。そこまで難しい事ではありませんが、次の収益還元法の計算では、この現在価値と将来価値の計算方法については知っておく必要があります。
参考:現在価値とは?
まぁ、ここでは、感覚的に「そんなもんだな。」って思ってもらえればいいです。
収益還元法による計算式と不動産価値の計算方法
土地については未来永劫に渡って劣化しないとするならば、その収益期間は無限大となります。対してその上モノである建物については日々劣化していきます。そのため、その価値劣化に伴って理論上の家賃収入は年が経過するごとに減少していきます。
この混合である不動産の価値計算は結構難しいのですが、このページでは簡素化の為、土地と建物双方の収益を合計して計算していきます。
「なんだ、使えないじゃん。」なんて思わないで下さい。一応の計算のベースは説明しますので、すべてこの応用で対応する事ができます。また、実際社会においては、金利の変動、景気の動向などにより厳密すぎる計算を行っても最終的には必ずズレが生じてきます。
さて、その算出方法ですが、式は非常にシンプルかつ簡単です。
不動産の収益還元価値=収益÷利回り
です。なぜこのようなシンプルな式になるかについては、収益が永久に続くと今年〜n年後までの現在価値の合計は
収益÷利回り×{1−1÷(1+利回り)n乗}となり(等比数級の和の公式)
(1+利回り)n乗はn=∞とすると、解が1になるからです。
数学好きの方は自分で計算してみても良いですが、面倒な人は上の赤太字の結論部分だけを覚えておいてください。
つまり、不動産の価値は、不動産から得る収益を利回りで割る事で簡単に計算する事ができるのです。わかりやすくする為に、簡単な例を用いて考えてみましょう。
賃料年間200万円のマンションがあるとします。そして、東京における一般的なマンション投資の利回りが6%前後であることを考えると、
200万÷0.06=3333万
つまり、このマンションの価値は3333万円という事になります。このようにシンプルかつ簡単に求める事ができます。
この収益還元法という考え方はなにも不動産投資だけでつかえる概念ではありません。
例えばあなたが今購入を検討している分譲マンション(購入価格2500万円)があるとします。
これと同じマンションが賃貸に出されており、その賃料が年間120万円だとすると、120万÷0.06=2000万円となり、今検討している物件は割高な物件ということになります。(購入する場合)
逆にこの計算から、あなたが引越ししようとしている物件の賃料が妥当かどうかについても検証することができます。
このように不動産の収益還元法は大変便利ですので、是非覚えておいてください!対不動産投資の営業マンに対しても「収益還元法」について問い合わせて見てください。相手側もきっと「コイツ素人じゃないな」と思ってくれるはずです(笑)