不動産投資とレバレッジ
ここでは、セールストークというよりも不動産投資のリスク部分にすこし触れていきます。マイホームをはじめとして不動産投資は多くの場合「借金(住宅ローン)」を組んで投資することになります。ここでは、「ローンを組む」ということが経済的にどのうような意味を持っているのかを分かりやすく説明していきます。
マイホーム・不動産を借金して買う場合のリスクについて
これまでは、わかりやすいよう現金払いで家を購入する事を前提としてきましたが、実際ほとんどの場合は頭金でローンを組んで購入するというパターンがほとんどだと思います。そこで、借金を前提に営業マンのトークの裏を暴いていきます。
頭金1000万円で残り3000万円をローンを組んで購入するAさんと、1000万円を株式で運用するBさんについてもう一度、バランスシートを用いて考えて見ましょう。
持ち家の場合 Aさん | 賃貸生活の場合 Bさん | |||||||||
|
|
前回は、バランスシート上、AさんもBさんも全く違いが無いといいましたが、今回はぜんぜん違います。AさんとBさんのバランスシートの違いは借金をしているかしていないか。という点になります。
不動産のセールスマンは、「こんなに低金利なんだから、借金をして金利を払っても、今の家賃で十分に支払えますよ。」というでしょう。しかし、これには資産運用にレバレッジ(梃子)をきかせているに過ぎないのです。
レバレッジというのは聞きなれない言葉かもしれませんので、少し説明を加えます。
例えば、100万円で資産を運用した場合、5%の値上がりで5万円の利益を得ます。
次に、100万円+900万円の借り入れで資産を運用した場合、5%の値上がりで50万円の利益を得る事ができます。
このように、資産に借金を加えて資産を運用する事で資産に「テコ」をきかせることができるのです。上の場合は利益を得る事ができましたが、逆に、5%の値下がりの場合、前者は5万円の損で済みますが、後者の場合は50万円も損をしてしまします。このように、レバレッジをきかせるというのは、ハイリスク・ハイリターンの代表的な資産運用方法です。
レバレッジについては「投資とレバレッジとリスクに対する正しい理解をしよう」でも詳しく説明しています。
資産成長のエンジンになるがリスクも大きくなる
話が少し脱線してしまいました。話を不動産投資に戻した場合、ローンを組んだAさんは必然的にリスクが高まります。(逆に、リターンも増えますが。)Aさんの場合、自己資本の4倍の資産運用をしているわけですから、不動産の価格が5%減少する事によって、自己資本は200万円も減少してしまうことになるのです。対して、Bさんの場合は有価証券のの価値が5%下落しても50万円の損失ですみます。
住宅ローンを組む場合は、このような、ハイリスク商品を購入する。という事を肝に銘じておく必要があることを十分に認識しておいてください。
ただし、何も悪いことだけではありません。レバレッジが効いているハイリスクということは逆にリターンも大きくなることがあるわけです。5%値上がりすれば元金の20%もの利益がつくことになるわけですから。
レバレッジコストであるローン金利も忘れてはダメ
不動産投資の場合にはレバレッジのためにコストがかかることを忘れてはいけません。
投資用不動産のためのローンは住宅ローン金利と比較してやや高めの水準となっています。
「投資物件の利回り」>「ローン金利」であれば問題はありませんが、物件の利回りが低下する場合などには逆方向にレバレッジが働く(レバレッジによるマイナスの拡大)につながる可能性もあります。